


命や暮らしに関わる情報収集や発信、難しく
震災直後、被災地で最も求められたものの1つに命や暮らしに直接関わる情報があった。人々は安否情報や水や食料の確保、電気・ガス・水道の復旧状況などを知りたかったが、インフラが破壊され、地元の情報収集は難しかった。
また、被災した自治体等は臨時災害放送局(臨災局)を開設し、被災者が必要とするきめ細かい情報をFMラジオを通じて発信することができるが、広告収入などが基本的に見込めないため、開設や運営などの費用が自治体にとって大きな負担になっていた。
日本財団は弔慰金・見舞金の配布を通じてこの現状を知り、検討を重ねた結果、臨災局への支援を決定した。
被災した自治体にFM放送局の開局・運営費などを支援
日本財団は、臨災局の免許主体である自治体に対して、開局や運営のための費用、さらに情報収集をするための車両の購入費を支援。また被災地ではラジオ機器自体も不足していたため、携帯ラジオも配布した。事前の調査により、各臨災局の周波数の周知が課題とわかり、配布するラジオの表面に周波数一覧のラベルを一枚一枚、ボランティア約20人が2日間にわたって手作業で貼って届けた。
このほか、放送すべき情報の減少に伴いコンテンツ制作が課題となっていた臨災局には、日本財団の被災地支援活動や避難所でもできる健康体操など役立つ情報を番組として制作、提供した。
支援を受けることになった自治体の1つ、宮城県亘理町は震災直後、役場が倒壊する危険が生じたため、災害対策本部を約1ヵ月間、庁舎前の駐車場にテントに置き陣頭指揮に当たっていた。安否情報、水や食料の確保、町内の被害状況……。住民に知らせるべき事柄はいくつもあったが、停電や通信の遮断などで防災メールも使えず、職員は情報発信できないもどかしさに苦しんでいた。
2011年3月24日、町は臨災局「FMあおぞら」を開設。2011年6月には日本財団の支援も決まり、運営資金などとして計650万円、車両購入費として150万円、ラジオ計2,500台を受け取った。
やがて1回あたりの放送時間も延び、当初プレハブ小屋だったスタジオも、2012年2月には町立施設「悠里館」の2階に移った。2012年に町が全家庭に対して実施したアンケート調査によると、「ラジオが頼り」との回答が目立ち、ラジオを聞いて外出する気持ちになれたという声や、地元の情報が流れてくるだけで安心という声も聞かれたという。
新規開局や放送継続を後押しし、被災者への情報伝達に大きく貢献
日本財団の支援は、臨災局の新規開局と放送の継続を大きく後押し、被災者への情報伝達に大きな役割を果たした。早急な支援策の発表により、安定的に臨災局を運営できたと自治体や専門家からも高い評価を得た。
一方、臨災局を支えるスタッフは一般の住民ボランティアであるケースが多く、プロとして放送に携わってきたわけではない。復興とともに変化するリスナーのニーズに想いを馳せ、番組コンテンツを工夫する。コミュニティラジオとして残る小さなラジオ局では、こうした地元の方々の奮闘が今も続いている
プロジェクトデータ
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- 事業名
- 臨時災害FM放送局支援事業
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- 実施団体
- 日本財団
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- 放送局
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おおつちさいがいエフエム(岩手県大槌町)
かまいしさいがいエフエム(岩手県釜石市)
おおふなとさいがいエフエム(岩手県大船渡市)
りくぜんたかたさいがいエフエム(岩手県陸前高田市)
けせんぬまさいがいエフエム(宮城県気仙沼市)
けせんぬまもとよしさいがいエフエム(宮城県気仙沼市)
みなみさんりくさいがいエフエム(宮城県南三陸町)
とめさいがいエフエム(宮城県登米市)
おおさきさいがいエフエム(宮城県大崎市)
おながわさいがいエフエム(宮城県女川町)
いしのまきさいがいエフエム(宮城県石巻市)
しおがまさいがいエフエム(宮城県塩竈市)
なとりさいがいエフエム(宮城県名取市)
いわぬまさいがいエフエム(宮城県岩沼市)
わたりさいがいエフエム(宮城県亘理町)
やまもとさいがいエフエム(宮城県山元町)
そうまさいがいエフエム(福島県相馬市)
みなみそうまさいがいエフエム(福島県南相馬市)
いわきさいがいエフエム(福島県いわき市)
とみおかさいがいエフエム(福島県富岡町)※郡山市富岡町の仮設住宅にて開局
すかがわさいがいエフエム(福島県須賀川市)
たかはぎさいがいエフエム(茨城県高萩市)
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- 期間
- 2011年4月21日~12月26日
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- 場所
- 岩手、宮城、福島、茨城の4県
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- 拠出総額
- 1億7,402万3,064円、22局