


カフェづくりで目指す、地域の将来を担う人材の育成。
被災地で子供支援を行うべく発足した、フィリップ モリス ジャパン株式会社と日本財団の共同プロジェクト「Doorway to Smiles」は、当時高校生への支援が比較的少ないことに着目した。現状の課題としては、リアルな社会体験の機会が少ないこと、地元就職先の減少や生まれ育った地域の魅力に気づいていないことから、地元に将来の希望が見出せていないことが挙げられた。そこで、高校生にさまざまな職業体験や、課題解決のプロセス、世代を越えたコミュニケーションを経験してもらうことで、地域の将来、東北の未来を担う人材を輩出することを目指し、宮城県石巻市で高校生が主体となった土日祝日限定のコニュニティカフェを作ることに決定した。
高校生が学びや成長を得られる場にするには、彼らを導き、能力を引き出す役割の大人が必要だ。本事業は、フィリップ モリス ジャパン株式会社からの4,000万円の支援金を元に、日本財団と3つのNPO「み・らいず」「スマイルスタイル」「Co.to.hana」にて運営を実施。コミュニティづくりやファシリテーション、デザインなどの専門性と経験を持つ3団体と、日本財団のスタッフが、常駐または派遣で高校生をサポートする体制を取った。
高校生がゼロから主体的に考え、次世代を切り拓く力をつける。
2012年6月のキックオフに集まった高校生は、市内外の10校から約30名。コンセプト作りに始まり、すべてゼロから自分たちで考え、話し合いながら準備を進めた。学校をテーマにした内装作りや、料理研究家・堀田裕介氏の指導の元、地元の食材を取り入れたメニューの開発。SNSを使っての効果的な宣伝・広報の模索も。さらに地元の農家・漁業者を招いての勉強会や、接客・調理の訓練などを行い、11月3日の開店を迎えた。開店後は、地域の人々を笑顔にしたいという想いでカフェ運営を行いながら、新聞・テレビからの取材や、他地域の高校生との交流、イベントへの出店などさまざまな経験をしている。
主役は高校生。いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)
高校生で決めたお店のコンセプトは「まちを元気にするカフェ」。地産地消に基づいたメニューを、地元の生産者、加工会社、専門家などのサポートを受けながら開発している。売上は彼らの活動資金となり、新商品開発、研修や視察など、カフェの成長やチャレンジに使われる。また、高校生の活動をサポートする大人スタッフの人件費も、大人スタッフが担当する平日営業の売上などから創出し、持続可能な活動の仕組みをつくっている。
カフェは、調理・接客・会計の他にも、様々な社会的体験を得られる場所。高校生たちが身につけた能力は非常に多く、新しい自分の興味や才能を見出すことで、将来の進路や、職業の選択肢の広がりにつながっている。また地元の産業を学び、地域の人と関わる中で、「将来地元の役に立ちたい」という声も強まっている。卒業生の中には、自分の力を活かし、震災を後世に語り継ぎ、本当の復興に向けてアクションをしたいと宮城県庁経済商工観光総務課に就職した人や、ここでの調理経験から宮城調理製菓専門学校へ進学し、将来大人スタッフとしてカフェに携わることで地元に貢献しようとする人がうまれている。今後も事業を継続し、将来を担う人材の育成に取り組んで行く。
プロジェクトデータ
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- 事業名
- 被災地における高校生等の自立支援
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- 実施団体
- (特)み・らいず
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- 期間
- 2012年4月~2014年5月
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- 場所
- 宮城県(石巻市)
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- 拠出総額
- 3,428万円