


津波により約2万隻の漁船が破損・流失。5%にあたる1000隻を修理目標に立てる
水産業は東北の基幹産業だが、津波により漁船の大半が破損・流失。水産業の担い手である漁師の多くが操業できなくなってしまった。今回の震災で流失などの被害を受けた漁船は約2万隻と推察され、その大半が小型漁船。新造するには時間も費用も必要であり、製造の集中により部品などが品薄になってしまっている。この状況下、いち早い漁業再操業の実現には、破損の軽微な漁船を修理することが、その一歩になる。実際に、2万隻の全てが全損しているわけではなく、5%にあたる約1000隻は修理が可能だろうと思われた。
仮設修理場を計8ヵ所に設置。2011年6月には修理希望の受付を開始
日本財団は、漁業者のいち早い操業を実現するため、地元の造船関係業者と漁協、自治体、舟艇メーカーと連携し、被災した1トン程度の小型漁船を中心に修理することを決めた。
修理に必要な運送用大型トラックや発電機などの機材費は日本財団が支援し、材料および作業員の人件費は水産庁からの補助金を活用。
2011年6月上旬から、岩手県漁連と宮城県漁協が、修理希望船舶の受け付けを開始。期間を3ヵ月間に定め、仮設修理場1ヵ所につき100隻、合計1000隻程度の修理を予定した。仮設の修理場は、岩手県の宮古、釜石、大船渡(2ヵ所)、宮城県の気仙沼、志津川、石巻、東松島の計8ヵ所の港周辺に設置した。
想定外の課題が続出。しかし、約750隻を修理し、漁業者に戻した
実際に修理を開始すると当初の予定通りには進まなかった。
搬送されてくる漁船の大半が想定以上に激しい損傷を受けていたことや、漁船それぞれが潮の流れなどの個別の環境に合わせた独自の仕様になっていたことも影響した。つまり、それぞれの仕様に応じた修理が必要であり、当初は2日で完了すると見られた修理に1週間必要になったケースもあった。エンジンの調達に数ヵ月かかることもあった。こうしたこともあり、修理の受付期間を3ヵ月から、6ヵ月に変更。結果、半年後の2011年12月末時点で、当初予定に1000にこそ届かなかったものの、約500隻を修理。受付を完了している残り約250隻も継続して修理した。

設備が流され、修理する環境も失われた中、「『材料も、設備も、修繕業者も集めてきます』という支援の知らせが届きました。光が見えたと思いました」と宮城県漁協・志津川支所に務める高橋一実さんは語る。
6月10日に行われた修理艇第1号のお披露目式では、3ヵ月ぶりに漁船が海に浮かんだ。「言葉は交わさなかったが、表情でみんなの気持ちは十分に分かった。関係者全員が、復興の第一歩を踏み出した瞬間でした」(高橋さん)
プロジェクトデータ
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- 事業名
- 被災小型船の再生支援
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- 実施団体
- 全国漁業協同組合連合会
(社)日本舟艇工業会
舟艇メーカー4社
(社)海洋水産システム協会
日本財団
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- 期間
- 2011年6月~2011年12月
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- 場所
- 岩手、宮城
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- 拠出総額
- 1億7190万7000円