


被災によって見つめ直された写真の持つ意味を、復興支援に活かす
東日本大震災の大津波によって大量の写真が汚損され、その復旧と持ち主への返還が課題となった。それと同時に、震災前の町並みの写った写真や映像を保存したり、被災状況や支援活動の様子を後世に伝えるための記録も必要とされた。
CIPAフォトエイド基金は、こうした写真や映像関連の被災地復興支援活動を支援するために作られた基金である。2011年7月、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)と日本財団が共同で設立し、日本財団との連携によって運営を開始した。
第1期はアルバム等の写真修復作業など、緊急支援的な活動に重点をおいてきた。そこで、第2期にあたる2012年度では、緊急支援的な活動に加え、被災地における平安で豊かな生活を取り戻すためのまちづくりやコミュニティ形成を視野にいれた活動に対し支援することとした。
写真と映像の力で、被災地域の過去と未来をつなぐ
フォトエイドプロジェクトの支援を受けた団体は、それぞれの方法で支援活動を行う。第1期にあたる2011年度では、インターネット上の公募から18件が選出された。
例えば、陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト実行委員会は、東日本大震災で被災した陸前高田の博物館資料写真を洗浄、デジタル化し、被災地の以後の博物館活動、文化財保護の支援を行った。
また「親子の日」普及推進委員会は、被災で失われていく友人や家族との絆を保つため、こども達や地域の写真館に記録の残し方を伝授。また、離ればなれになってしまった仲間達がそれを共有するための手段として、インターネットの使い方を指導した。
日本社会情報学会(JSIS)の「思い出サルベージアルバム・オンライン」では顔画像認識を生かした写真検索を提供し、デジタルフォト時代ならではの支援として注目を集めた。
緊急的支援から、より平安で豊かな生活を取り戻すための活動支援へ
第2期にあたる2012年度は、17団体への支援が決定。被災者同士、被災者と非被災者のつながりの場の創造、また被災地域の新しいまちづくりにおけるコミュニティツールとして、写真や映像の力を活用した。
例えば、“3.11忘れない! Photo Project”では、「石巻市立渡波小学校」の全児童約300名にレンズ付きフィルムを無償提供し、2012年5、6月に東京銀座・府中にて展示会を開催。総勢420名以上の来場者を記録した。2013年1月末から3月に銀座、函館でも展示会の開催を行った。
また、サンガ岩手が行う「復興を生き抜く女性の写真展」では、開設した手芸工房に訪れる女性の写真を展示。生活自立支援、仲間づくり、生きがいづくり、と様々な悩みを抱えつつ、針仕事に向かう女性たち。「笑顔で針仕事をするお母さん達。働く女性はいつも輝いている」と理事長の吉田律子さんは話す。写真や映像は単なる記録ではなく、撮った人、写っている一人ひとりにとって特別な意味を持つ。第2期の本プロジェクトは、写真を媒介に地域や個人に新しい価値を生み出し、2013年3月をもって終了した。
プロジェクトデータ
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- 事業名
- アルバム・写真レスキュー助成プログラム
渡小プロジェクト
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- 実施団体
- CIPAフォトエイド
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- 期間
- 2012年4月~2013年3月
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- 場所
- 岩手県、宮城県、福島県
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- 拠出総額
- 約1,006万円
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- 関連URL
- CIPAフォトエイド