


障がい者施設の建設を支援
震災後、被災した人の多くが避難所生活を強いられた。ただでさえ負担の大きな避難所生活だが、とりわけ障がい者にとって精神的・肉体的負担が大きく、その家族も健常者家庭への気兼ねから、落ち着いて暮らせる場所を必要としていた。
また、福島県富岡町では福祉施設利用者が原発事故により県外避難を余儀なくされ、施設職員も利用者のケアのため家族と離ればなれになった。故郷での恒常的な生活の場を確保する必要があった。
日本財団は、被災した地域で大規模に事業を行っている代表的な福祉関連法人でニーズ調査を行った結果、石巻祥心会(宮城県石巻市) と福島県福祉事業協会の二法人に対し、それぞれが計画していた障がい者対象の施設建設を支援することにした。
石巻祥心会に対しては、障がい者とその家族のための仮設福祉ハウス「日本財団ホーム 小国の郷」 (世帯用40棟、障がい者単身用2棟(7人/棟)の建設を支援し、いち早く生活環境を確保した。
また、福島県福祉事業協会には、恒常的な障がい者施設「日本財団ホーム東洋育成園」の建設を支援。遠方での避難生活を余儀なくされていた施設利用者の故郷帰還を促し、家族と離れ離れになっていた職員の生活の安定にも寄与した。
聴覚障害者の生活を支援
聴覚障害者は、震災においてより困難な状況に直面する。例えば、避難所で物資配給のアナウンスが聞こえず受け取れない、など生活に不具合の生じる場合も多い。また、東北地方はもともと手話通訳者が不足していたうえに、通訳者自身も被災してしまっていた。
そこで日本財団は、東日本大震災において津波などの被害が大きかった宮城、岩手、福島の3県の聴覚障害者を対象に、遠隔情報・コミュニケーション支援を実施。情報アクセスとバリアフリー化を図るとともに、先駆的なモデルの復興支援を目指した。
地道な活動で受け入れ現場の理解を促し、障害者が支援を受ける土壌を築く
聴覚障害者への支援の方法は、iPhoneやiPadなどの携帯端末や専用テレビ電話を用いて離れたところから通訳を行う「遠隔通訳支援」、聴覚障害者に代わって電話をかける「代理電話支援」、臨時災害FMなどで流れる情報を文字化して配信する「文字起こし支援」の3つだ。
現地でのIT技術に対する馴染みの低さもあり、電子機器を用いるこれらのサービスそのものが敬遠されることが多く、理解を得るのに苦労した。しかし、各地での説明会実施や、Twitterやfacebookを活用した広報、市役所や社会福祉協議会ら、聴覚障害者関連施設へ直接訪問する「東北ローリング大作戦」の成果もあり、設置施設や利用者数は次第に拡大。2011年9月11日~2015年3月31日の3年半の間、支援を実施し、最終登録者は338人、端末設置窓口は28ヵ所であった。利用数は代理電話が最も多く12,886件、次いでテレビ電話6,068件。窓口/遠隔通話の利用は270件となった。
また、聴覚障害者自身が遠隔通訳を利用して被災地でのボランティア活動に参加するケースもみられた。
東北を遠隔・コミュニケーション支援のモデルに
2012年12月7日に発生した三陸沖地震(最大震度5弱)では、情報センターはテレビ、ラジオ、インターネットの情報やTwitterを使って情報を収集し、聴覚障害者向けの文字情報を発信した。今回、この経験が生き、現地からも多くの文字情報が発信され、全国からの多くの支援につながった。また、この支援をきっかけに全国の聴覚障害者の電話利用を可能にするための「日本財団電話リレーサービス」が開始されることとなった。
プロジェクトデータ(2014年度末時点)
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- 事業名
- [1]「日本財団ホーム 小国の郷」の設置
[2]「日本財団ホーム 東洋育成園」の設置
[3]聴覚障がい者に対する支援拠点の強化
[4]聴覚障がい者の心のケア・生活支援
[5]聴覚障がい者の情報コミュニケーション遠隔支援
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- 実施団体
- [1]石巻祥心会
[2]福島県福祉事業協会
[3]聴覚障がい者に対する支援拠点の強化 > 東日本大震災聴覚障害者救援中央本部
[4]聴覚障がい者の心のケア・生活支援 > 日本聴覚障害ソーシャルワーカー協会
[5]聴覚障がい者の情報コミュニケーション遠隔支援 > 日本財団
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- 期間
- [1]2011年6月(開所式)
[2]2012年3月(開所式)
[3]2011年3月24日~2012年3月31日
[4]2011年8月~2013年3月(延長)
[5]2011年9月~2015年3月
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- 場所
- [1]宮城県石巻市、[2]福島県田村市、[3]宮城県、[4][5]岩手、宮城、福島の3県
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- 拠出総額
- [1]1億7590万円 [2]1億5962万円 [3]750万円 [4]2160万円 [5]2447万9987円